Drupal 開発ディレクター兼エンジニアが仕事、育児、本など雑多に書くブログ

WebディレクターとしてDrupalを専門にするということ

Drupal Advent Calendar 2021 15日目の記事です。

 

Drupal Meetup 羽田 #36でも少し話しましたが、Drupalの注目度はここ数年確実に上がってきています。

一方で、「Drupalをキャリアにする」というのはまだまだ少数派で、一般的なキャリアパスからはまず思いつかないところだと思います。

 

エンジニアとしてのDrupalキャリアについては既に書いてくださったので、今回はディレクター軸で、私が「Drupalを専門にやる!」と決めるまでに考えたことをまとめてみました。

 

 

書いてる人

誰やねんという方向けに、YOUTRUSTにプロフィールを記載しました。

Web未経験から、広告代理店でディレクター/プロジェクトマネージャーとして5年間勤め、この2月からDrupalを専門とするWeb開発企業でディレクターとして働くことになりました。

 

まだ何も成し遂げていない状態で書くことに少し気が引けますが、同業者の参考になれば幸いです。

 

広さか深さか、Webディレクターの進む道

長期的なキャリアに悩んでいるWebディレクターは多いです。全員と言っても良いかもしれません。

私の場合、これからのキャリアパスを考える際に「広さか深さか」という視点で考えました。

 

簡単なWebサイトからはじまり、デジタル広告やSNS、EC、MAなど対応するチャネルの幅を広げていくのが、ここ最近の一般的なキャリアパスだと思います。

 

一方、「デジタルマーケティング」という言葉が指す領域が広がる中で、Webサイト構築という枠の中で自身の知見を深めたり、MarketoなどのMAのスペシャリストを目指したり、ソーシャルマーケティングに特化する等、領域を定めて追求するというキャリアパスもこの数年で飛躍的に選択肢が増えてきました。

 

マーケティング軸で広さを取るのが王道

それでも最も一般的なものはWebプロデューサーやプランナーといった「より上流でマーケティングを考える職に就く」ケースです。

下記のようなキャリアパスが王道でしょうか。

  • 小さな制作会社で、小さくも多数のWebディレクションを経験
  • 中規模のクリエイティブエージェンシーで、案件規模やタイプを拡大
  • 大規模なデジタルエージェンシーで、より統合的にデジタルマーケティングを支援
  • コンサル会社やプラットフォームベンダーで、基盤から提供する立場へ

 

案件規模や年収レートを考えてもライフステージの変化に合致しており、より現場的な仕事から上流工程へと渡り歩いていくのはごくごく自然な流れと言えます。

 

広さを取るのはずっと後で良い

王道ルートは王道だけあってもちろん魅力的ですが、優秀な人だとあっさり35〜40歳ほどでかなり上流のところまで辿り着いてしまいます。

もちろんその後も経営側に回って新たなビジネスを築いたり、新たな人材を育成したりとやることは多々あるのでしょうが、私はこのキャリアにワクワクできませんでした。

 

デジタルマーケティングはとかく進化が速く、常に最前線に立っていないと置いていかれるという危機感を感じています。

 

人生100年時代、今20-30代の人はおそらく80歳くらいまで働くことになります。

であれば少なくとも50歳くらいまでは「今一番やりたいこと」だけをもっと真っ直ぐに追いかけて、自分の専門性(深さ)を追求する方が今の時代に合っているのでは?と考えました。

 

勝てそうな領域を見極めて全身全霊を賭ける

ではどこで深さを取るかですが、プランナーやマーケターといった上位のマーケティング職へ進むことが一般的です。

私の場合は、ここで勝てる気がしなかったんですね。

もちろん修行を積んでいけばできるとは思いますが、ワクワクしないというか、この先に天職がある!という感じがしなかった。

 

一方で、マーケターと技術者の橋渡しをするような仕事が肌に合っていました。

 

企業のマーケティングを考える人と、制作・開発者との間を5年間行き来してきました。

その中ではじめは分からなかったことを理解して話せるようになることがとにかく楽しくて仕方が無かったし、マーケティングとテクノロジーの両軸を捉えて全体のバランスを取る役割は、実は誰にでも出来ることではないと感じました。

 

やっぱり、自分が心から楽しいと感じる領域でしか勝てません。

優秀なソーシャルマーケターは、当たり前のように企業アカウントを毎日眺めています。優秀なプランナーは、企業のマーケティングを眺めてああしたら良いのに、こうしたら良いのにと無限にアイデアを頭の中に貯めています。

 

デジタルマーケティングの中心へ全集中する

デジタルマーケティングという言葉には、広義と狭義の2つがあると思っています。

広義のデジタルマーケティングは、「デジタル上で行われるマーケティング」。

狭義のデジタルマーケティングは、「デジタル技術を用いて課題解決するマーケティング」。

 

今や多岐に渡るデジタルマーケティングですが、それでも中心地は自社のWebサイトです。これはこれからも変わらないでしょう。

その自社サイトを狭義のデジタルマーケティングで捉えた時に、解決策がCMSであり、そのCMSOSSでやろうというのがDrupalです。

 

知を結集してデジタルマーケティングのど真ん中の基盤を作る。

Drupalに出会い、やはりこのど真ん中に全集中したいと考えるようになりました。

 

Drupalにチャレンジしてみたい方へ

少し長くなりましたが、要するにディレクターとしてDrupalに全集中することは、デジタルマーケティングの中で最もコアな領域を攻めるということです。

 

と言いつつ、私もまだ本格的にやっているわけではありません。これからです。

Drupalをやるって結構面白そうだなと思っていただけた方へ、いくつかポイントとなる考え方をお伝えしておきます。

 

コミットしたいと思った時がその時

新卒でDrupalを食い扶持にすべきかというと、おそらくほとんどの人にとってはNoだと思います。

OSSは宇宙みたいなもので、その深さは計り知れません。

しつこく向き合う必要があるので、Drupalに仕事人生を賭けても良いと思った時」がその時なんだと思います。

 

もちろん一度Drupalの世界に入れば他のキャリアが途絶えるということではありません。

ただ現在の王道からは外れていますし、数年は根気強くやらないと楽しいことだけではないでしょう。

 

私も3年前だったら考えもしないキャリアでした。というか思いつかなかった。

それが市場がじわじわと拡大し、大規模で複雑な案件を取り仕切れるディレクターの価値が上がってきていることを肌で感じました。

 

また、他のプラットフォームをたくさん見るというのも重要かもしれません。

いろいろ見たうえで改めてDrupalに触れると、やはりよく考えて作られているなというのが腹落ちし、「なぜDrupalなのか」が自分の言葉で説明できるようになってきます。

狭めるということは、代わりとしてそういう覚悟や納得感は求められるでしょう。

 

やっている人が少ない分、頑張れば日本一にだってなれるかもしれません。

そういった市場環境も踏まえて面白いと思うなら、是非共に歩みましょう。

 

テクノロジーが好きなディレクターは一歩チャレンジしよう

日本でIT人材が不足しているというのは、ずっと言われているところです。

 

私ももう30歳を過ぎましたが、先述した通り人生は思った以上に長いです。

 

Web未経験で5年間せっせと働いて、Webディレクションについては「出来ます」と言えるようになりました。

時間をかけて目の前の問題を解決していけば、今全然想像できない自分に到達できるということが分かった。

このことは、技術的な領域を専門としていく決断を後押ししてくれました。

 

たとえ天才エンジニアにはなれなくても、マーケターとエンジニアの間で自分にしかできない仕事は必ずあります。

今見えている世界を基準に、生涯のキャリア選択に幅を狭めてしまう必要はありません。

 

人が好きで、発信して人を巻き込んでいける人

Drupalは汎用性が高く頑張れば何でもできる一方、ベストプラクティスを見つけて使いこなすのが難しいCMSです。

常に進化していて、特に日本語情報はまだまだ足りていない部分も多々あります。

書けども話せども、語り尽くされることはないでしょう。

私も今こんな記事を書いていますが、あらゆる視点から様々なアウトプットが求められています。

 

コミュニティもまだまだ狭い世界で、Drupalを中心に生きている人と簡単に繋がれます。

会社の枠を超えてもう一つのコミュニティを見つけられるというのは、個人事業主と会社員の中間のような感覚でちょうど良いなと感じています。

 

何かを学んで発信することが好きで、多種多様な人と議論を交わすことが好きな人にとっては、とても楽しい環境だと思います。

そして、どんどん行動して勝手にリーダーシップを発揮し、人を巻き込んでぐいぐい引っ張っていくような人が、市場から求められている気がします。

 

おわりに

書き出したら思いの外長くなりました。

 

やっぱり「ディレクター」というこのなんとも定義しづらい仕事が好きで、気付いたら結構コアな領域に辿り着きました。

せっかくやるなら、とことんまで突き詰めたいと思います。

 

同じミッションを持って働ける仲間でありライバルのような人が、これから今後さらに増えてくることを期待し楽しみにしています。