『人生がときめく片づけの魔法』は、私を「片づけもできないダメ人間」から救ってくれたスゴ本
本を読むことで人生が変わるかと問われると、明確に「はい」と答えることはできない。
これまでそれなりに本を読んできて中には感銘を受けた本もいくつもあるが、じゃあどの本の何によって何が変わったかというのは、実証のしようが無い。
それでも大きな変化を生み出す認知変動のはじめの一歩として、読書によって導かれる世界があることは確かだ。
あえて一冊をあげるとすると、こんまりさんの片づけ本が思い浮かぶ。
この本を読んだのは大学生の頃。
その頃は浅い自己啓発本やビジネス書を買いあさり、気の向くままに読みはじめた頃だった。
今もそんなに変わらないのであるが、底辺高校から大学に上がりたての頃だったので、「読書をしている」こと自体が優れていることのように考えていた節はあったと思う。
当時の私は母と妹と3人で新しい家に引っ越した頃だった。
3階建ての新築の隅の部屋。はじめての誰も介入しない自分だけの世界で、足の踏み場が無くなるのにそう時間はかからなかった。
ベッドの上を中心に生活をし、読んだ漫画や一生畳まれることの無い洗濯物に囲まれて本を読んでゲームをして過ごした。
学校に行ってバイトに行って帰って寝てと強制される生活はかろうじてこなしながら、強制されない場所での自分は堕落そのものだった。
そんな頃にこの本を読んで片づけられる人間になった。
この「片づけられる」というのは、片づけられない人間にとってはかなり大きい。
片づけなんて「飯を食う」「歯を磨く」「顔を洗う」と同じレベルで誰もが当たり前に日々こなしていることだ。それができないというのは、自身の無能さを常に意識させられることに他ならない。
とにかく若くて、誰かの凄いアイデアにものすごい速度で感化されることができたというのは大きかったかもしれない。
これは禁煙セラピーなども同じで、クリティカル・シンキングができない時期ならではの飛躍の仕方というのがあるんだと思う。
今覚えているレベルでこの本を要約すると、
- 自分にとって、心がときめくものだけを保持し、身の回りに置きましょう。
- それ以外の不要なものは、感謝の気持ちを持って、あなたの身の回りからは排除しましょう。
ということだと認識している。
大学というこれまでとはまったく違う、多種多様な人がいる情報過多の世界で、
- 自分の人生は、自分で選択するものである
- そのためには、まず身の回りのもの全てにおいて、「自分の選択」というフィルターを入れなければならない
という軸を身につけられたのはとても大きい収穫だった。
また、この本では今の自分の生活の大きな軸となっているGTDと共通する概念も習得している。
片づけにおいても、気づいたものから片づけはしないのだ。
まず一旦要るものも要らないものもすべてを一箇所に集めて、一つ一つ手にとって「ときめくか」を判断するという流れになっている。
これは紛れもなく、GTDの「収集と処理は分けよ」という原則に沿ったものである。
その後GTDに出会って「インボックス」という考え方を習得してからは、人生が随分と楽になった。
あらゆるものはまず一旦一箇所に集めて、「結局何をすれば良いんだ?」ということは一つずつ見極めていけば良い。
そうすれば複雑な問題にも対処できるという自信が芽生えたはじめの一冊が、この本でした。
成熟した大人には、特別おすすめしない。
でも若くていろんな悩みがあって身の回りのことを一つずつ処理していくのにも精一杯なのであれば、「自分で選択する人生」を獲得するための大切な一冊になるかもしれません。
そんな感じ。